初UP2008/12/24
ver0.86メモ版最終更新2009/02/08
本論考はいずれウェブ上のフォーラムで皆様のお知恵をお借りしようかと思っています。

「一応」アイデアについて知的所有権を主張させていただきますので,このサイトのアイデアを引用される際には,ここのURLを明記していただくようお願いします。

インフレ目標バナー広告

ゲゼル=山下式政府貨幣(GY政府貨幣)とリフレ政策

平成開珎

「貨幣的トンネル効果」と非負制約の壁の突破

専修念仏型バラマキと「虹効果」

「朕自ラ皇朝銭ヲ率ヒ、日銀理論ヲ鎮圧セム」

・心配しなくてもいいのよ。あなたのはいている
銀の靴には、すばらしい魔法があるんです。もし、
あなたがそのことを知っていたら、こんなに苦労
しなくてもすんだんですのに。いいですか、あな
たがその銀の靴のかかとを三度コツコツコツとう
ちあわせて、どこでもあなたのいきたいところに
つれていけと言いさえすれば、あなたはどこへで
も飛んでいけるんです。

『オズの魔法使い』

・ダメダメ。あまりにもケチくさい。せめてその
10倍以上,25兆円くらいパ〜ッとバラ撒かな
きゃ(中略)日銀が拒否したら,政府が刷っちゃ
えばいいんです。 あまり知られていないけど,
「政府発行紙幣」というのがあって,貨幣は日銀
だけじゃなく,政府も発行できるんだから。
高橋洋一氏発言,週刊プレイボーイ2008/12/15


・あら,産経新聞にパクられちゃったかな。とか言って(笑)
紙面イメージ:産経新聞2009/1/13一面「いまこそ100年に一度の対策」記事(田村秀男氏ブログ)

自民議連:「政府紙幣」などで3月末に提言−景気対策の財源確保狙い(ブルームバーグ2009/2/6):「単なる」政府貨幣のようです。



いまや世界の少なからぬ国々がゼロ金利に追い込まれ,金融政策に関しては「地球が静止する日」が近づいている。なおかつ物価下落が続いており,流動性の罠という日本病が世界的に発生しかねない状況である。

このような中では通常の金融政策ではなく,また財政政策でもなく,あらたに「貨幣政策」というべき新たな政策ツールが考案されるべきである。政府貨幣発行については高橋洋一氏やスティグリッツ氏はじめ何名かから提案されつつある。ここでは単なる貨幣ではなく,特別な性質を仕込んだ政府貨幣を設計することによって経済政策を行なうという,「政策志向政府貨幣」を設計する。

以下に述べるものはとりあえず日本の状況を改善するために最も都合よく考えられているが,これ以外にもいろいろな可能性はありうるだろう。

なおスティグリッツ提案に対しては,これはUFJの2003年のレポートだが,「景気対策を目的とした政府貨幣増発の帰結」というのがある。なかなかどうして,的確なことを指摘している。ここで指摘されている問題があるから,単なる貨幣ではなく,「特別な性質を仕込んだ」政府貨幣を考える必要があるということ。


ここでは政府貨幣を減価貨幣として考え,リフレ政策に活用することをもくろむ。減価貨幣 はシルビオ・ゲゼルSilvio Gesell考案になるものであり,彼の名と筆者の名を取って「ゲゼル=山下式政府貨幣」(以下GY政府貨幣)と名付けさせていただく。
減価貨幣の基本的な考え方は貨幣から価値保蔵機能を取りさるということである。

ケインズ『一般理論』の最後のほうにゲゼルについての言及があり,「後世の経済学者は、マルクスよりもゲゼルからより多くを学ぶであろう」と言わしめている。ゲゼルの著作は自由経済研究会と相田慎一氏により精力的に翻訳紹介がなされている。

自由地と自由貨幣による自然的経済秩序 シルビオ・ゲゼル著/相田愼一訳
Gesell Research Society Japan
自由貨幣- Wikipedia

「麻生太郎氏の経済学的帰結」?
増税を初めから宣言して給付金ばらまきをやる。
デフレ下でなおかつ巨額財政赤字下においてそんなことやっても,人々は「リカード的」に反応して,ためこんでしまうだけだろうね。
『定額給付金は減価貨幣実験のチャンス』(巷間哲学者の部屋)

とはいえ,聡明なリフレ派の方々はお気づきのように,単なる減価貨幣では「インフレ・コントロール」(苦笑)が難しくなるのも確か。そこで他の性質をいろいろと仕込む必要がある。

(ネットで「政府貨幣」だけで検索すると,たぶん丹羽さん系のサイトにばかりぶつかって,それを読むと「こりゃあハイパーインフレだよなあ」と思ってしまうでしょうから,たぶん今まではあんまり政府貨幣によるリフレってまじめに追及されてなかったんでしょうねきっと(^^;)


*基本的着想

次の効果を使う:
「ゼロ金利下(またはゼロに近い金利下)で減価貨幣の政府貨幣をヘリコプターマネーすることは,マイナスの実質金利を付けることに相等しい」

これを貨幣的トンネル効果(monetary 'tunnel' effect)と名付けておく。

理路:
減価貨幣は必ず使われるので必ずハイパワードマネーを増大させる。ハイパワードマネーが増えるとインフレになるので,「十分長く」ゼロ金利が続いているときに「十分長く」貨幣散布が続けられるとインフレ期待ができ上がる。すると現在のゼロ金利は実質マイナス金利と判定されるようになる。

これによって,「名目金利の非負制約」の壁を突破して,壁の向こう側にスルッとマイナス金利が出現する。こうして流動性の罠を突破する経済政策が可能となった。ノウヘル経済学賞ぐらいもらえそうだ。

ヘリコプターベン画像

ノウヘル画像

*「預金課税」じゃだめだよ!
深尾光洋氏は以前からデフレ克服のために預金課税論というのをとなえている。が,それは実際にやったら,銀行預金から「タンス預金」へのシフトが起こるから,破滅的な取り付け騒ぎになっちゃいますね。それじゃあだめだ。ヘリコプターマネーと貨幣的トンネル効果じゃなきゃあ。

GY政府貨幣の性質及び発行方法:

*発行主体は財務省。

*プリペイドカード方式で発行する。

有効期限付き(3ヶ月程度):これにより減価貨幣とおなじく価値保蔵機能を取りさる

*カード一枚あたりの額面が小さい手交(hands-to-hands)貨幣。3000〜5000円。
額面が大きいか小さいかは使われるかどうかに大きく影響を与える重要な問題。ここでは日常的取引に使われる手交貨幣としての性質を与えるわけである。
なお額面か小さいこと,手交貨幣については貨幣システムの世界史 黒田明伸著岩波書店を参照のこと。GY政府貨幣は黒田氏の著作から多大な影響を受けています。

*有効期限内においては少なくとも日本銀行に持ち込めば(または市中銀行で代行),カードのポイント残高は日銀券ならびに硬貨と交換してもらえる。ただし額面から10%の手数料が徴収される。

これにより有効期限内においては「日本円」と完全な兌換性を持つことが法的に保証される。
外国通貨との兌換性は,すくなくとも公式には認めない(これは,国際金融のトリレンマのうち,「資本移動の自由」に制限をかけていることを意味する)。
実はここが難点でして,ここでは円のマネーサプライをコントロールしようとしてるわけですから,「円とは違う別の貨幣」をサプライしようとしてるわけじゃないわけですね。あくまで「一国家一通貨制」のたてまえは崩さない。「しかし,じゃあ,すぐに換金されて退蔵されてしまうではないか」という疑問があろうかと思います。もっともな疑問です。そこで,以下の性質を仕込むことが必要になるわけです。

*GY政府貨幣は特定品目の購入にのみ使える特定目的貨幣である。

*間接税との抱き合わせで使用する。
特定目的貨幣については,またしても貨幣システムの世界史を参照のこと。一般的交換性を持たないで,特定品目だけしか買えない。「それじゃあ,貨幣じゃなくて単なる配給券じゃないか」とおっしゃる方には,「いや,ちゃんと円と兌換できますから,あくまで円の一種です」といってしまう。つまり「配給券」と貨幣の性質を合わせ持つわけです。粒子=波動二重性のごとし。
この特定品目を買うとき,GY政府貨幣を使うと割引価格,または間接税が減免または無税になることに定める。これによって政府貨幣を使ったほうがお買い得であるというインセンティブをつける。

*カードは全国民定額一律ばらまき。

*発行頻度並びに金額についてはあらかじめ明示しない。「景気動向を見ながら裁量」で決める。3ヶ月に一回年4回程度。貨幣の流通速度があがらないときは有効期限を短縮して発行頻度をあげる。

*まず日銀内に政府が「政府貨幣引き出し口座」を一つ作る。

*この口座に決済専用政府貨幣「一兆円ニッケル貨」にて発行金額を振り込む。(これは現行法でも合法的に行なえる)この時点で政府は莫大なシニョレッジ・ゲインを手にする。

*日銀は振り込まれたのにあわせて支払い準備金を積み増しておく。(いわゆる量的緩和をしておく。本当は法改正が必要だが,日銀と政府の「アコード」でもよい)。

*有効期限終了後,特定品目を取り扱った業者,ならびに換金手数料を取った銀行にはポイントが蓄積されている。これを換金するには,
財務省に請求書を出す。
財務省は,引き出し口座により,ポイントの金額分の小切手をきる。ただしこのとき消費税を徴収する。手数料を取った銀行からは半額を税として徴収する。
業者は小切手を使い政府貨幣引き出し口座から現金を引き落とす。
以上の手続きは市中銀行により電子的に代行される。要するにGY政府貨幣とは小切手であり,小切手を貨幣として流通させているということ。

*使われないで無効化したGY政府貨幣は,政府貨幣引き出し口座内に残金として残る。これは政府の国庫に編入してよい(これは法改正が必要)。

特定品目と税の抱き合わせの例:

*「CO2削減的な」公共交通機関(事実上鉄道)の乗車券購入に充てることができる。
これは将来カードを使ったピークロードプライシングを導入するための地ならしでもある。

*指定の環境機器並びに省エネ機器の購入に充てることができる。このとき割引価格適用。
環境機器並びに省エネ機器の購入ローンまたはレンタルの支払金にあてることができる。
カーボンオフセット事業の投資に使うことができる。

これらは地球温暖化対策を「口実にした」産業振興策です。実を言うと省エネ機器が普及したからといってCO2排出が削減去れるかどうか定かではないんですが(^^;(ジュボンズ『石炭問題』のパラドックス)まあ温暖化に悪乗りしようと。いまは「環境ファシズム」の時代ですから。温暖化懐疑論者のようなよけいなこという「アカ」は弾圧せねばならん(笑)
まあ,「なにが省エネ機器なのか」という認定をめぐって,当然ながらトラブルは多発するでしょうがね。「地デジ」のテレビは省エネ機器なのかどうなのかとか。なるべく公正な認定機関を作ってもらうしかないとは思いますが。

*灯油・ガゾリンを税減免で買うことができる。普通の貨幣で買うときには高めの炭素税が適用される。カーボンニュートラル燃料については無税。
これはいっけん温暖化対策に反するように見えますが,炭素税のような間接税に必然的に伴う所得にたいする逆進性の緩和措置です。これにより「灯油が買えなくて凍死してしまう母子家庭」のようなことを防ぐことができる。ただし政府貨幣分を越えるぶんについては,「奢侈的消費」としてどんと税がかかる。
カーボンニュートラル燃料は価格弾力性が大きい財,灯油ガソリンは価格弾力性が小さい財だから,この炭素税の課税の仕方は逆弾力性原則どうりなんですが,炭素税っていうのは「懲罰的」な税で,あるものを使わせないための税で,それなりに高くしておかないと効果がない。しかし,「今日の世界では低所得者層ほどCO2排出的である」,つまり高い環境機器は低所得者層は買えないんで,灯油を使わざるを得ない家庭が多くなるだろうと考えられる。そうだとすると,高い炭素税ほど低所得者層をバッシングしかねないので,GY政府貨幣で「補助」を入れるというわけ。

*託児所・保育園その他指定の子育て支援施設の料金支払いに充てることができる。
これは一見直截な子育て支援のように見えますが,実はクラウディングアウト解消措置です。つまりこれをやっておいて託児所・保育園料金を引き上げる。
現在託児所・保育園不足が深刻ですが,これは民業の参入が少ないからと考えられる。つまり勧業の料金が安すぎるからだろう。だから料金引き上げで民業参入をはかって不足を解消することをねらう。ただし値上げをすると,下流層の負担感がふえて,子どもを産んでくれなくなりますから,GY政府貨幣で支援するというわけ。

*財政規律ルールの設定:

必ずしもそうしなければならないというわけではないが,財政規律ルールの一応の設定。GY政府貨幣によってあがった政府収入は,とりあえずすべて国債償還に充てられることにする。
このルールの設定によって,「ジンバブエ化」についての世間的不信を払拭することはできる(発行可能なGY政府貨幣の上限は,国債累積残高までということになる)。
なおかつ「財政の維持可能性」についての不信も払拭することはできる。これによって与謝野馨のような凶悪な増税至上主義者を鎮圧することができる。
やってることは国債とキャッシュを取り替えることで,日銀の国債引き受けとおなじ。日銀はやらないでしょうが。
公債というのは減らせばいいというものでもないと思うが。ただしゼロ金利を脱却した後利子率が上がりだすと暴れ馬になる。また公債残高の増加が「富効果」となって,貨幣需要を増大させ,利子率がさらに上昇して民間資金需要を圧迫する「ポートフォリオ・クラウディングアウト」というのが将来的には起こりうる。(実はクルーグマン=オバマの「財政で行こう」は,将来このポートフォリオ・クラウディングアウトに襲われるかもしれない。ロヨラ=フリードマンの亡霊がバアアックしてくるかもしれない,あっても数年後だろうが)

*GY政府貨幣を発行してもいい根拠,または発行できる条件:

通貨不安がないこと。中央銀行券に錨づけつつ,なおかつ露骨に悪貨を発行するわけですから。経常赤字が大きいとか,累積債務の不安があるとかいう国はいっぺんに通貨不安をたきつけられる。
リフレのためにやるわけだから,もちろん高インフレ国はだめ。
政府債務のほとんどを自国民が保有している。という状態は,国債保有/支払いというのは国民のある部分からある部分への資産の移転です。その所得移転をいじる。それがGY政府貨幣発行。
ということで,いまこの貨幣を発行できるのは,世界で日本ただ一国でしょう(笑)
逆に,日本は発行できるチャンスではありますけどね。歴史的チャンスというべきか。

*GY政府貨幣をもちいた流動性の罠からの脱出手順:中央銀行と政府の「第1ファウンデーション・第2ファウンデーションハイブリッド」定跡

結局日本の経験が教えるところによると,いったん流動性の罠にはまってしまった経済というのは,中央銀行の奮励努力だけで脱出するのは難しいということでしょう。というと反対があるかもしれませんが,そもそも流動性の罠なんてのに落ち込んじゃうような国の中央銀行は,そこへいたるまでにもう十分無能さをさらけ出して市場の信頼を失っちゃってるということでしょうから。そういう無能な中銀にいまさらもっと果敢になれと叱咤してもしょうがないかなという感じですね。
むしろ,無能な中銀でもデフレ脱却できるような,政府と中銀の連携による定跡手順というのを経済学者の方が考えていただいたほうがいいと思いますね。

1)デフレ傾向が強まってくると,中央銀行が利下げをくりかえす
2)それでもデフレが止まらずに,ついにゼロ金利に追い込まれる
3)ここで中央銀行(第1ファウンデーション)はあっさりフォールダウンし,流動性の罠という「ミュール」が制圧する
4)政府主導(第2ファウンデーション)にエンジンが切り替わる。政府はGY政府貨幣を散布して,マネタリー・トンネル・エフェクトを発生させてインフレ期待に反転させる 5)なお政府は「どマネタリズム」にもとづいてGY政府貨幣散布を続け,インフレ率をコントロールする
6)十分インフレ率が上がってきたら,徐々に金利をつけていって第1ファウンデーション主導に切り替えていく
極端なマネタリズムだから「どマクロ」ならぬ「どマネタリズム」(笑)。中間的指標としてマネーサプライ伸び率をとり,期待インフレ率とマネーサプライ伸び率が一致するようにマネー散布を続ける。

ちなみに高橋洋一氏は政府貨幣は「2万円札」でひとりあたり10枚,計25兆円をばらまけといっておられます(週刊プレイボーイ2008/12/15)が,25兆円の根拠は何でしょうね。もしかしたら,GDP×名目成長率5%=25兆円と割り出しておられるんでしょうか。それだと高橋さんもどマネタリズムで計算してることになりますが。
その後2009/1/13産経の一面トップに「今こそ100年に一度の対策:日銀券とは別の政府紙幣…」という記事が出て驚きましたが,そこでは「もちろん、政府紙幣の発行額には限度もある。高橋洋一東洋大教授は、その発行適正規模を「25兆円」とみている」とありました。魚拓:産経新聞2009/1/13一面「いまこそ100年に一度の対策」 週刊プレイボーイでは「あまりにもケチくさい。せめてその10倍以上,25兆円くらいパ〜ッと」といっていたので,「限度もある〜適正規模は」と「せめてその10倍以上」っていうのはニュアンスとして最高と最低でなんかかなり違います。産経の記者があまりに過激すぎる提案だと感じて最高というニュアンスにしたのかもしれませんが。

GY政府貨幣というのは即効性があります。金融政策より早く効果が出てくる。なおかつヤバイことがあっても副作用が残留しません。だからGY政府貨幣をツールとしてつかうこの手順の場合,「中央銀行の金融政策」のような効果に時間がかかるものはもうすこし長いタイムスパンにフォーカスさせることができる。あわてて逆噴射をかけちゃうという,無能中銀によくありがちな傾向は防止できる。

*「中央銀行は激しすぎるダンスを踊るべきではない」「FRBはその有能さによって滅びる」?

日銀はその無能さが糾弾されるべきだが,FRBにもし問題があるとしたら,その無能さではなく,有能すぎることにある。有能な中銀は,果敢に行動するが,それがまた思わぬところに副作用を生むこともある。つまりは「中央銀行は激しすぎるダンスを踊るべきではない」ということ。今回のサブプライム危機は,直接には2001年ごろのFRBのダイナミックな利下げ,そして「十分長い」低金利の維持,ゆっくりとした利上げという動きの副作用である。これについてスティグリッツはグリーンスパンを批判しているけれども,この「ダンス」はデフレ回避の早期警戒モードだった。これはまさに90年代日本の失敗から学んだもので,デフレ回避モードはあらかじめ練り上げられていたのでしょう。が,おそらくは「十分長く」が「ほんの少し長すぎた」がために不動産バブルを招いてしまったということでしょう。つまりFRBは90年代日本の失敗は回避したが,80年代日本の失敗を反復してしまったと。
つまり「中央銀行は激しすぎるダンスを踊るべきではない」というのがもし教訓化されるべきであるとしたら,中央銀行とは相対的に別の政策ツールを政府側が保有しておくべきで,危機の時にはハイブリッドエンジンでいくべきではないかということです。

*専修念仏型バラマキと「虹効果」

GY政府貨幣を一律平等にばらまいてしまうというのは,一見したところ芸が無いように見えますが,そんなことはない。
「バラマキに悪いことは何もない」「もっとも効率的なバラマキ方を考えよ」(原田泰) もっとも効率的なバラマキというのは,たぶん全国民一律バラマキでしょう(笑)

なおかつ注目すべきは,このGY政府貨幣は,所得水準に応じてプリズムでスペクトル分解するように違った効果があらわれて,なおかつどの所得水準においても良い結果が出ることです。
1)下流=貧困層=悪人:彼らは日常の消費にさえことかいている。よって,GY政府貨幣をもらったらすぐに現金化するだろう。そしてすぐに必要な消費をするだろう。まさに干天に慈雨である。この層にとっては,GY政府貨幣散布とは端的に「負の所得税」である,つまり現金支給である。
2)そこまで貧困ではない下流:やはりすぐに現金化するだろうが,消費するよりは熱心に貯蓄するだろう。よって,この層については散布したものは退蔵されるだろう。ただし,いつまでも貯蓄しているわけでなくて,ある程度ためこんだら所得効果が出てきて徐々に消費に回し始めるだろう。
3)中流:いちいち換金するのはめんどうであり,また手数料を取られてポイントが目減りするのをきらうだろう。カードのまま電車賃に使ったり,ガソリン代に使ったりするだろう。あるいは子育て支援が得られるので,いままで生みたくても生めなかった家庭が子どもを産む気になるかもしれない。
4)富裕層=善人:この層にとっては「この程度のはした金」はあまり限界効用はないのでもらってもそんなにありがたくない。だがこの層はエコとかロハスとかに関心があるので,「社会的に有益な」消費・投資に使ってくれるだろう(自力作善)
5)「愛国心あふれる」超富裕層(笑):まったく使わないで期限切れにする。するとその分のシニョレッジは全額国庫に落ちて,国が使うようになる。

このように所得水準に応じて違った効用が現れ出でて,なおかつそのすべてが「公共善」の向上に寄与する。これを「虹効果」と呼んでおこう♪アーテイスティックですねぇ〜
制度設計というのは,すべからくこのように繊細な配慮をきかせたものでなければなりません。>そうだろう麻生さん。

「幸い,貧しい者」(田川健三版マルコ)
「善人なおもて往生をとぐ。いわんや悪人おや」(歎異抄)

もちろん子育て家庭だけとか,寒冷地だけとかいうスポット的な配付もできます。ただし,「低所得者層だけ」とかいう配付は絶対にやめたほうがいい。「この貨幣を持っていると下流だ」とか後ろ指さされるので,みんな嫌がって使わなくなりますから。

*より厳密な議論は,GY政府貨幣,消費者余剰,最適課税の一般理論というのを作らないとだめですね。これはもう新しい経済学を一つ樹立しないといけないです。私には手にあまる(^^;

*この「虹を出す」というのはこの政府貨幣の派手なパフォーマンスである。もっとも,それがどうしたといわれるかもしれませんが,これはやっぱり意味がある。なんといっても,世間知な方々にリフレ政策を納得してもらうためには,こういうケレンの身振りが必要だ。
なにしろ「世間知」な人々のなかには,サカキバラ民主党とか,ロスジェネ左翼とか,蟹工船左翼とか,東アジア共同体左翼とか,そういう凶悪な人がいっぱいおりますから(苦笑)
これが「量的緩和」をやめるべきかどうか,とか,日銀はもっと国債を買い取れ,とか,そういう灰色の議論ばっかりだともう誰も関心を持たないですから。やはり金融政策の易行化っていうのは必要です。


*「朕自ラ皇朝銭ヲ率ヒ、日銀理論ヲ鎮圧セム」

上のGY政府貨幣の定義を見ればわかりますが,GY政府貨幣は銀行による信用創造というのをいっさいみとめてません。「専制君主」が通貨発行権を独占していた,古拙の貨幣体制への先祖返りであります。だからこれは原理主義的な外生的貨幣供給論。
LETS派や地域通貨はから見れば,この政府貨幣,とんでもない超国家主義的貨幣だということになるでしょうな。「国家自ら,地域通貨の偽札を作る」ようなものなんだから(笑)。

ところが,日銀理論というのは伝統的に原理主義的な内生的貨幣供給論。あまりに極端すぎて,「日銀はベースマネー,マネーサプライを制御できない」という,自らの存在理由を否定してしまいかねないものになっている。
で,この「関東軍」が猛威を振るってるのに対抗するためには,原理主義的な外生的貨幣供給論で「君主大権」を発令するしかないと(笑)。「朕自ラ皇朝銭ヲ率ヒ、日銀理論ヲ鎮圧セム」というわけです。

なお日銀理論が内生的貨幣供給論であることについては,次の論文があります。ただし斉藤氏の論調は日銀に好意的ですが。
 斉藤美彦「内生的貨幣供給説としての日銀理論ー量的緩和論批判に至る系譜ー」広島県立大学論集4巻1号2000.8
また,ヤマト政権における「皇朝銭」とシニョレッジをめぐる歴史の分析に,『富本銭と謎の銀銭』今村啓爾 がある。名著ですなこれは。



オバマ=クルーグマン=バーナンキのアメリカが「財政で行こう」なら,デフレ日本はGY政府貨幣で行こうじゃないか!

面白くなってきたじゃないか。



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